詩的２０のお題。

　　　
　　　１２：『太陽』

　　　さんさんと照らし続ける　まっかな太陽
　　　ぼくの足下にも　ひかりは届いて

　　　散歩がてら　陽と陰のさかいめを歩いてみた

　　　雲が流れるたび　陰はどんどん増えていく
　　　オレンジになってく　太陽はいつか

　　　消えてなくなってしまうの？
　　　
　　　昼間の輝きはどこかへしまって
　　　夕方のオレンジバケツをこぼした

　　　おおきな　おおきな　ひとりの太陽
　　　さよならのかわりに　世界を染めて

　　　ぼくは　またねって手を振った

　　　　　　　　　　　　　　　　　（お題は『追憶の苑』牧石さんより。）

詩的２０のお題。

　　
　　　１１：『鋭く、細く』

　　　窓ガラスに　細いキズが入っている
　　　テーブルの脚に　鋭いキズが入っている

　　　真っ暗な夜に　細い月が刺さっている
　　　僕の心に　鋭い何かが刺さっている

　　　気付いたら　体中が痛くて

　　　気付いたら　僕は傷だらけで

　　　気付いたら　僕は…
　　　鋭く、細いナイフを持っていた

　　　　　　　　　　　　　　　（お題は『追憶の苑』牧石さんより。）

詩的２０のお題。

　　
　　　１０：『あしあと』

　　　まっしろい地面に　あしあとが残る季節
　　　ちいさな足も　おおきな足も
　　　
　　　いろんなところに　あしあとつけてる

　　　まだ誰も踏んでいない　まっしろな地面見つけたら
　　　ひとりだけ　歩いたあとが残ってた

　　　みんなから離れるようにして残る　あしあとに
　　　なんだか　興味がわいてきて

　　　一緒に　あしあとつけてみたんだ

　　　歩くたびに　しくしくなって
　　　泣いてるような　音に聞こえた

　　　ながいながい　ふたりのあしあと

　　　顔も名前も知らないけれど　
　　　とても　とても　愛おしく思えた

　　　どこまで続くんだろうって思ったら
　　　ひとりの男の子が立っていて

　　　こんにちはって　わらったら

　　　ありがとうって　きえちゃった

　　　　　　　　　　　　（お題は『追憶の苑』牧石さんより。）

詩的２０のお題。

　　　
　　　０９：『その、背中』

　　　最後に見たのは　いつだったかな

　　　別に　友達ってわけでもなかったし
　　　だから　特にしゃべったこともなかったし

　　　向こうにとって　私なんて記憶にないかもしれないけど
　　　私は覚えてるよ　君のその、背中

　　　久しぶりに　思い出したんだ
　　　一回だけ話した時のこと

　　　お互い不器用なことしかできなくて
　　　君に苦い思い　させちゃったね

　　　それじゃあって駆けてく　君の背中を
　　　いつまでも　見ていたんだよ

　　　それが　たった一度の君との思い出
　　　私の　初恋だったんだ

　　　　　　　　　　　　　（お題は『追憶の苑』牧石さんより。）

詩的２０のお題。

　　　
　　　０８：『鎧』

　　　それは　争いの絶えない時代の事
　　　
　　　私は　ある戦い人に出会いました
　　　
　　　自身を覆い隠すかのような　
　　　大きな鎧をかぶっていました

　　　私が　重そうですねと尋ねたら
　　　愛する人を守るためですからと言いました

　　　何にも屈しない　強い瞳に
　　　私は　涙を落としました

　　　もう二度と　還っては来ないあの人に
　　　私は祈る事しか　できませんでした

　　　　　　　　　　　　　　　（お題は『追憶の苑』牧石さんより。）